調査・研究えひめの歴史文化モノ語り

第67回
2020.4.10

本物を持参し出前授業

教材「弥生のくらしパック」

「れきハコ 弥生のくらしパック」。学校教育団体に貸し出し可能=県歴史文化博物館保管(借用手続きの詳細は博物館HPに掲載)
 博物館は、展示している資料を見学に行く場所だと思っておられる読者の方も多いことだろう。しかし、博物館に行かなくても利用する方法がある。
 当館には、学校教育団体等に貸し出しする教材「れきハコ」があり、小・中学校・高校の授業で活用することができるのだ。今回は数種類ある「れきハコ」の中から、「弥生のくらしパック」を紹介したい。
 このパックには、貫頭衣(かんとうい、復元資料)、体験用石庖丁(いしぼうちょう、復元資料)、石庖丁(実物資料)、弥生土器(実物資料)、木製農具(写真パネル)、水田遺構写真パネル、稲作模型の写真パネルがセットで入っている。写真パネルは資料解説付きの「モノカード」となっているので、カードを通じてモノへの理解を深めることができる。
 実物資料は、どれも県内の遺跡の発掘調査で出土した「ホンモノ」である。筆者も年に数回、この「れきハコ」を小学校に持参して、出前授業を行っているが、「ホンモノ」の弥生土器を手にした児童の皆さんの反応は毎回異なり、忘れることができない。
 ある時は、土器の中をのぞき込み、においを嗅ぐ児童がいたり、ある時は、土器の表面をよく観察して付着した煤(すす)を見つけ、「どのように使ったのか」を聞かれることもあった。
 また、秋には、稲穂が実った水田に出向き、弥生時代の収穫具である石庖丁(復元資料)で、稲刈りを体験することもできる。現代の稲刈りと比べることで、弥生時代に生きた人々の暮らしも感じることができるであろう。
 学校教育と博物館が連携する「博学連携」が重視されているが、この貸し出し教材の利用校も徐々に増えている。「ホンモノ」の弥生土器を手にして過去の歴史を追体験していただければ幸いである。

(専門学芸員 冨田 尚夫)

 見て・触って・体験できる貸出教材キットの「れきハコ」についての詳細は、当サイトの「教育支援」の中の「れきハコ」でご確認ください。

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